1. はじめに

 

 今回私は予防と健康の授業のレポートとして、まず授業でアスベストに関するビデオを見て、ビデオの内容と私が選んだキーワードから選んだ論文とを合わせてその内容から私が考えたことを、将来医師になる立場としてどう考えたかについてレポートとしてまとめ、その概略と考察を書いた。

 

 

2.選んだキーワード

 

「アスベスト」 「飛散」

 

 

3.選んだ論文の内容の概略

 

(1)アスベストの利用の歴史は紀元前2500年にまでさかのぼることができるが、19世紀末になり産業革命にいる動力や機会の導入に、パッキングや絶縁体が必要になり、アスベスト工業界の刺激になった。1847〜77年にかけて、カナダでクリソタイルの大鉱床が発見され、また短繊維のアスベストがアスベスト・セメントに利用できるようになると同時に、ブレーキ・ライニングなどの新しい利用面が開発されて、その需要が急速に増大した。

 不燃性、耐熱性、耐圧性、抗張性、などが高く、熱や電気の絶縁性も大きく、化学薬品に強いなどの優れた性質をもつアスベストは、耐熱用、保温用、防火用、耐水用、熱や電気の絶縁用、摩擦材料、騒音防止などに利用され、その用途は3000以上もあり、20世紀の魔法の鉱物と言われている。アスベストの主な用途として、アスベスト繊維を主とするもので、糸、紙、布など、アスベストとセメントを混ぜたもので、板、スレート、煙筒など、アスベストと合成樹脂、ゴムを混ぜたもので、ブレーキ・ランニング、クラッチ・ふぇーシングなど、アスベスト粉末と他の液体または粉材と混ぜたもので、塗料、接着剤の混和剤などがある。

 アスベストにはいくつかの定義がある。たとえば、アメリカ科学アカデミーの定義(1977)は、天然に産する水和珪酸塩鉱物で繊維状の形態を示す工業的に利用価値のある一連の鉱物郡としている。アメリカ鉱山局の定義(1977)は@石綿状を示すさまざまな鉱物の集合名称で、A石綿状を示す鉱物の採掘、加工に伴って得られる産物。ここで、石綿状を示す鉱物とは繊維(fiber)、あるいは単一繊維(fibril)が高い抗張力と柔軟性を持つ特定な鉱物繊維をいう。

NIOSH-OSHA(米国国立産業安全保健研究所と米国産業安全保健局)のアスベスト・ワーキング・グループの定義(1980)では、石綿とはクリソタイル、クロシドライトおよび繊維状カミングトン閃石−グリュネ閃石(アンモナイトを含む)、繊維状トレモライ、繊維状アクチノライト、繊維状アンソフイライトと定義し、これらの繊維状形態は光学顕微鏡レベルでアスペクト比(長さと幅の比)が3:1かそれ以上の粒子として確認された場合としている。

アスベストを吸入したヒトの肺組織の中に吐き出される痰の中に黄金から黄褐色をした奇妙な形をした物が光学顕微鏡で観察されてきた。これはアスベストの繊維がフェリチンやフェモシデリンに由来する鉄を含んだ物質で覆われているものであり、アスベスト小体と呼ばれ、1965年頃までは職業性暴露の労働者を対象に光学顕微鏡でアスベスト小体を検索して、アスベスト暴露の証拠としてきた。

そこで、光学顕微鏡で観察したものを含鉄小体と呼び、電子顕微鏡で中心の繊維をアスベストと同定した物だけをアスベスト小体とよぶことになった。1980年以降になると、肺内のアスベスト小体、アスベスト繊維の検索・同定だけでなく、定量結果を踏まえて暴露レベルの判別(職業性直接暴露、間接暴露や一般大気からの暴露など)の研究が行われ、分析電子顕微鏡による計数定数の基礎が確立された。

(2)じん肺の一種としての「アスベスト肺」については、労働省(現・厚生労働省)でもそれなりの予防策を1970年前後には開始していた。

72年にはWHO(世界保健機関)が発ガン物質であるとの認識を示し、日本でも発ガンのことも考慮して作業環境に対する規制を強めていった。さらに75年には発ガン性の強いクロシドライト(青石綿。ほかに白石綿=クリソタイルと茶石綿=アモサイトがあり、発ガンリスクについては青>茶>白とされる)を用いてきたアスベストの吹き付けを禁止し、クロシドライトの代替指導を行うなど、欧米と歩調を一にした規制強化を行ってきた。環境への排出規制に関しても大阪府が71年に開始した。

環境庁でも、一般環境に問題がないか、78年頃からアスベストの健康影響について文献レビューなど始めていた。規制を担当する大気規制課でも工場からの排出口と敷地境界について濃度測定を行なうなどの予備調査を77年から開始していた。その結果、敷地境界では濃度測定が可能であり、一般環境中でも測定可能でないかとの感触をえて本格的な調査のための予算要求を行ない、「アスベスト発生源対策調査」として81年度からの3ヶ年の調査が認められるに至った.

規制を考える際、どの程度の濃度ならばどういう健康影響があるかということを把握し、未然防止のための濃度レベルを設定し、それを可能にするように規制を行うのが、もっともオーソドックスな方法であるが、そういう知見は皆無であったし、第一、一般環境中濃度がどの程度なのかというデータもなかった。そこで一般環境中の濃度は作業環境濃度と比較してどの程度かを調査し、発ガン物質は閾値がないとされ、低ければ低いほどいいという当時の国際的な考え方を踏まえ、そうするにはどうすればいいか、という問題意識から出発せざるを得なかった。一般大気環境中の濃度測定法の確立、立地特性別環境濃度の把握、使用・排出実態や排出防止技術、代替品の開発状況、諸外国の状況などを3ヵ年かけて調査した。本調査の眼目は一般環境大気中の測定法を確立し、立地特性別の環境濃度を把握することであり、おそらく世界初の試みであった。

その調査結果を踏まえて、結論部分では「現在の一般環境大気中濃度は作業環境に比して低く、一般国民にとってのリスクは小さいものの、アスベストが環境蓄積性の高い大気汚染物質であり、かつ毎年大量に輸入され、広範に使用されていること等から、今後長期的なモニタリングが必要であること、環境大気中への排出をできるだけ抑制することが望ましい」と提言した。そしてこの調査が一般環境中への排出規制へとようやく結びつき、その後環境庁は一般環境濃度の定期的な調査を続行、また廃棄物処理法でも廃アスベストは特別管理産業廃棄物とされて。

 

4.選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたこと、将来医師になる目で捉えた考察

 

 アスベストは20世紀の魔法の鉱物といわれるほど、不燃性、耐熱性、耐圧性、抗張性、などが高く、熱や電気の絶縁性も大きく、化学薬品に強いなどの優れた性質をもち、80年代以前の建造物はアスベストを使っているのが当たり前で中、アスベストのリスクを過小評価した責任は政治、行政、産業界、医学界、マスコミすべてのもの、すなわち「時代」にあると言わざるをえない。しかし将来医療に携わるものとしてこのような問題がどうしてここまで大きくなったのか、また今後二度と同じ過ちを繰り返さないために、どうしていかなければならないかを考えなければならない。むろん1972年にはWHOが発ガン物質であるとの認識を示し、日本でも1971年に特定化学物質障害予防規則(特化則)が制定され、石綿が規制対象物質(第2類物質)となり、作業環境の厳しい管理、健康管理などが義務づけられた。1975年には石綿等吹き付け作業の原則禁止、粉砕、解体作業等における原則湿潤化が義務付けられた。1995年茶石綿(アモサイト)および青石綿(クロシドライト)の製造、輸入、譲渡、提供または使用が禁止された。なお、石綿の規制対象に関わる含有率が5%(重量)から1%に変更された。2004年、石綿をその1%を超えて含有する石綿セメント円筒、押出成形セメント板など10種類の製品の製造、輸入、譲渡、提供または使用が禁止された。2005年、石綿は特化則から外れて石綿障害予防規則が制定された。

 このような日本のアスベストに対する法的処置より、中皮腫は30〜40年と長い潜伏期間があるとされているため、今日の惨劇の大半は主として60年代の規制なき時代のものであろう。また70年代の規制はまだ緩いものであったから、それに起因する惨劇は続くだろう。80年代後半からは厳しい対策を取るようになり、その効果が現れるのはまだまだ先のことである。そのためアスベストの完全使用禁止を直ちに訴え、またアスベストを含んだ建造物の解体を進めていかなければならない。しかしアスベストを含んだ建造物の解体時に粉じんが発生するだろう。そのためアスベストの建造物の解体時にが発生する粉じんが環境大気中に飛散しないような充分な対策の規制と罰則の強化を図らなければならない。また、吹き付けアスベストについてまず周辺の濃度調査を行い、一般環境より高い濃度レベルかどうかをまず把握してから対策を考えるべきである。このようにこれ以上被害を大きくなるのを防ぐことが重要であり、またアスベストに罹患した患者に対する医療体制の充実と、予後の管理体制の徹底を行うべきだろう。

 

.まとめ                                                                                                                                                               今回のレポートを通して、アスベストに関する歴史的背景や知識を知ることができ勉強できたことは良い機会となった。この問題には社会的背景が大きく関わっていることが分かり、また社会のアスベストに対する過小評価によって招かれたのが、今日の中皮腫の拡大につながったのだろう。したがって、社会がまず最悪の事態を想定することが重要であり、病気に対する原因追求と治療方針の確立を迅速かつ正確に行うことに尽きるだろう。また、医療に携わるだろうものにとってまず第一に人の命を優先に考えそのために社会に対しても訴える勇気や努力も必要になるだろう。